合成洗剤に比べてBODが高い石鹸
石鹸と合成界面活性剤を比較した場合、石鹸は分解スピードが早く環境付加が低いといわれる一方で、BODという数値に関しては合成界面活性剤の方が低く、環境負荷が低いという見方もあります。どちらが真実なのでしょう。そもそも、BODとは直訳で生物学的酸素要求量といい、簡単にいえば河川の有機物を微生物が分解するときに必要とする酸素の量ということで、河川が汚れていると微生物が汚れを分解するため活発に働き、酸素を多く消費する結果として数値が高くなります。分解する有機物が多く河川の酸素量が不足すると微生物が有機物を分解できなくなり河底に堆積し、それがヘドロになることを考えると、石鹸よりもBODの低い合成界面活性剤の方がましだという考えもありますが、過去において石鹸が原因で河川に問題が起きたことはありません。しかし、石鹸を使えば確実にBODが高くなることは間違いありませんが、実際には石鹸だけが問題ではなく、米のとぎ汁や流し台のディスポーザーの使用も有機物が増えることになります(日本全国の下水道普及率は7割強、3割弱は家庭から河川に垂れ流し)。従って、出来るだけ有機物を河川に流さないようにすることが大切なのです。
使用量が少なくなると、BODも低くなりますが、少ないからといって全ての問題が解決できるほど単純ではありません。石鹸や洗剤に含まれる成分で分解されず長期にわたって河や湖に堆積する農薬や添加物の問題は、どの企業もあまり話題にしたがりません。
また、分解されても更に厄介な問題をおこす成分にも注意が必要です。たとえば、洗剤に含まれるLASが自然環境中で分解されるとノニルフェノール(*1)になり生態系に影響を与えることを世界で初めて環境省がつきとめたこと(*2)は新聞でも報じられましたが、分解されることでより危険な成分に変化するものが身近な洗剤にも含まれているのです。しかし、現在の日本ではEU諸国のような法律はありません。環境省は発表したものの無策のままで長年放置され続けておりますが、国に任せれば全て解決するものではないのです。我々は今、何をどのように使えば人にも環境にも負荷をかけず快適に過ごせるのかを、先ず考えることからはじめる必要があるようです。
(*1)ノニルフェノール(Nonylphenol)とは
合成界面活性剤やプラスチックの酸化防止剤の原料、塩化ビニルの安定剤等にも使用されています。ドイツやスイス等、EU諸国ではノニルフェノールがガンや奇形を発生させることから
家庭用合成洗剤(LAS)の原料として使用することが規制されています。
(参考)
日本では平成11年7月にPRTR法が公布され、事業者(企業など)が1年にLASやダイオキシン類など全354個化学物質を環境中に排出したかを把握・届出し、その結果を集計・公表する仕組みができたが、EU諸国のように使用を禁止することまでは法制化されていません。
(*2)ノニルフェノールが環境ホルモンに認定
2001年、環境省は環境ホルモン(内分泌かく乱物質)作用が疑われていたノニルフェノール(工業用洗剤の原料)について、一般環境中の濃度でも、メダカのオスの精巣に、卵子のもとになる卵母細胞ができるとする報告書をまとめました。厳密な実験で、特定物質の環境ホルモン作用(*3)を確認したのは世界で初めて。
調査は環境省が民間研究所に委託し、さまざまな濃度のノニルフェノール水溶液の中でメダカを受精卵の段階からふ化後60日まで飼育し、生殖細胞への影響を比べた。 その結果、1リットル当たり11.6マイクログラム(マイクロは100万分の1)の濃度で、精巣に卵母細胞を持つ「雌雄同体」が20匹中4匹に出現しました。 濃度が上がると、環境ホルモンとしての作用が強まることも分かりました。また、ノニルフェノールは、メダカの女性ホルモンの受容体と結びつきやすいことも試験管実験で判明し、魚類に対して強い環境ホルモン作用を持つことがメカニズム的にも裏づけらました。(資料:毎日新聞)
(*3)環境ホルモン
正式名称を、「内分泌攪乱化学物質」といい、環境ホルモンは体内に入り込むとホルモンに似た働きや、ホルモンの働きの邪魔をする化学物質です。 環境ホルモンといわれる所以は「環境中に放出され生物の体内に取り込まれるとホルモンに似た働きをする物質」という意味で名づけられた。又、人間の体内でつくられたホルモンは、人体の働きを調整しています。環境ホルモンが体内に入ると、細胞に勝手な命令を出し、その結果、体内のバランスを崩し、病気や奇形が生じる非常に危険な物質です。 |
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